BUTTER / 柚木麻子著

2009年に発覚した結婚詐欺及び3件の連続不審死事件で逮捕された木嶋佳苗(42)は4月14日最高裁判決により死刑が確定した。終始一貫犯行を否認しており状況証拠しかない為、判決に疑義を唱える向きもある。本書は犯人の名前を梶井真奈子とし、この事件を下敷きにしているがノン・フィクションでは無い。

梶井は中年男性から色仕掛で多額の金を巻き上げ、豪奢な暮し、特に美食を堪能していたようである。女性週刊誌記者の里佳(33)は、この事件に興味を持ち拘置所で面会するため梶井へ何度も手紙を書くが拒否される。大学同期で現在は退職し、妊活に励む怜子(33)の家を訪問した際、美食の話、レシピの話に持ち込めば興味を示すかも、との助言を受け面会に成功する。

梶井はマーガリンを忌嫌い、バターに対する思い入れを縷々述べる。炊立てのご飯に有塩のエシレバターを乗せ、醤油を一たらし。バターが溶ける前に掻きこむバター・醤油ご飯の旨さ。恵比寿のロブション、新宿靖国通りのラーメン屋(ホープ軒?)。里佳は梶井に言われるままに追体験していく。こうして梶井への取材を重ねるうち、里佳は欲望に忠実な梶井の言動に振り回されるようになっていく。

30人以上と言われる詐欺の被害者達はなぜ美人でもなく(被害者は一様にブスと言う)ポッチャリ型の梶井に騙されるのか?一回一万五千円のセレブ料理教室に通い、高級食材を潤沢に使って振舞う数々の料理で男の気を引く。そして自画自賛の性技。これら食欲、性欲そして金銭欲が絡み合ってグルグル廻り、ちびくろサンボ状態になる。それが溶けて遂にバターとなる。

物語はその後、里佳と梶井の心理戦が続くかと思いきや、意外に大きい振れ幅があり、怜子の意外な動きと相まって最後まで気が抜けない。里佳は遂に取材とインタビューを纏め自社週刊誌に連載することができた。しかし梶井の支援者と思われる男が里佳を全否定する記事を他の雑誌に載せ、里佳は追われるように出版社の他部署に異動となる。最後までハラハラするストーリーとレシピや調理の詳細な描写が興味を引く。特に最後に里佳が10人前の七面鳥を焼く件りはかなりくどいが面白い。

木嶋佳苗は昨年3月60代の支援者と獄中結婚している。彼女は多分この支援者の手を借りてブログをアップしていたが、現在でも「木嶋佳苗の拘置所日記」を公開しており最新の記事「バターってなんやねん 2017年5月11日」では著者の柚木麻子を強烈に詰っている。この小説の続きを読んでいるような錯覚を覚えた。

売れ残ってます/梓みちよ

この歌が発売された時、彼女は27歳。とても売れ残っていると嘆くような歳ではないと思うんですが、今とは少々感覚が違うようです。

こういう歌を聞くと昭和という時代は本当に良かったと思ってしまいます。平成の御代ではこういう歌詞はまず無理でしょう。もし、今このまま出せば結婚は個人の自由だ、晩婚者を差別するのか!とか言ってSNSが炎上するかもしれません。

まず、売れ残っていると自覚しています。でも幸せ、自由なんだと。だけどチャンスはいくらでもある。そう、その気になればできるんです。

売れ残ってます わたし
けれどもとてもしあわせ
恋の痛みも知らず
たのしく送る毎日よ
自由が両手にあふれているわ
恋するチャンスはいつもあるの
売れ残ってもいいの
涙の恋はいらない
その気になればできる
欲しくないだけ 今はまだ

トホホ度 ★★★
お笑い度 ★★★☆
意味不明度 ★★

 

 

Midnight Train To Georgia / Gladys Knight & The Pips

………..<2006.12.3>
 ご当地ソングというのはその地名(例えば長崎とか横浜)でなんとなくその曲の雰囲気が決まってきます。ジョージアは南部という事もあり、なぜか懐かしい田舎町のイメージがあります。レイチャールズの「我が心のジョージア」とかブルックベントンの「レイニーナイトインジョージア」もそんな感じの名曲です。グラディスナイトは長いキャリアがあり、現在も活躍しています。ディスコ時代には「イマジネーション」という大ヒット曲があり、どこのディスコでも必ず一度は掛かってました。

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KANREKI ロック/ミッキー・カーチス

最近、高見沢俊彦を中心にThe KanLeKeeZという三人組がデビューし、アルフィーのコンサートでGS風味の曲を演奏していましたが遂にCDをリリースしました。しかし、カンレキロックはミッキーカーチスのこの曲が先鞭をつけたと言って良いでしょう。ミッキーカーチスは立川談志の弟子で、同じ弟子である高田文夫が作詞しています。流石に高田文夫の歌詞は旨いと言えます。

………………
<2005.1.22>

かつてのロカビリーの大スターもついに還暦。還暦祝いが高田文夫プロデュースのこの一曲。監獄ロックのもじりでしょう。「バスも女も乗り放題」という訳分からんプレーズが素敵。

トホホ度 ★★★
お笑い度 ★★★☆
意味不明度 ★★☆

 

 

カッカッカッカッカッカッカッKANREKI ロック
KANREKI ロカベイビー  KANREKI ロック
カッカッカッカッカッカッカッKANREKI ロック
KANREKI ロカベイビー  KANREKI ロック
不良で長生きロッケンロール
そのうち誰でも還暦ロック

人生二度ありゃ、三度ある
地獄 極楽 PAPER一枚
栄養不良が いま不良

爺ーパッパルーラ SHE’S MY 便秘
ロカビリーでリハビリー
還暦・感激・監獄ロック

のっぽのサリーもくの字でロック
胃炎なしでも人間ドック
金持ち やきもち 病気もち
そこの姐ちゃん無茶しない?
ハシゴも5軒 6軒ロール

男はロックン60男 バスも女も乗り放題
I NEED YOU I NEED YOU
アレ オレ? ロクジュー?

人生K点 クリヤーBABY
ガタガタ言われりゃ ボケたふり
赤い革ジャン お祝いジャン

女もロックン60女
恋も男もやり放題
I NEED YOU I NEED YOU
アレ アタシ? ロクジュー?

大人のお作法/岩下尚史著

TOKYO MX TVで平日午後5時からの「5時に夢中」は今年で13年目に突入し、これまでミッツ・マングローブやマツコ・デラックスを世に送り出し、オネエブームの一翼を担って来ました。連日かなり濃いキャラクタの方々が出演されますが、最近一番面白いのはハコちゃんこと、岩下尚史氏であす。

ハコちゃんの最新刊は若手編集者の質問に答えるという体裁です。いつも「ウッスラ不機嫌」なハコちゃんらしく、若造を甘やかすこと無く、自論を展開しています。

編集者の質問は他愛ないもので、料亭に行ってみたい、寿司を喰う作法、歌舞伎の見方、宴席の張り方等々。まず、昨今の食通、グルメブームには辟易としており、寿司なんてものは出てきたものをサッと喰ってサッと出てくれば良いのだ、ネタの順番なんて自分の好きなように注文すれば良い、等とあっさり料理しています。

しかし、歌舞伎に関しては流石に深い。発言を拾ってみると
「しかし、とりわけかぶき芝居は、贔屓役者と交際し、幕内の事情に通じなければ、そのほんとうの妙味はわからない」
そして必ず祝儀や心づけを切る。
「しかし、男が独りで芝居見物というのは傍から見ても寒々しく、なんだか色気がないのでねぇ」
「『わたくしは伝統芸能が好きで』などと、しおらしい言い立てをしながら、世間の目褄を掻い潜り、本当のところは役者の色気に惹かれ、悩ましい思いで劇場に通う婦人客こそ、かぶき芝居の見物の本格に違いありません」
「だいたい貴方、かぶき芝居というのは新劇や現代演劇と違い、ぞっこん惚れぬいた役者を見に行くものだったんです。(中略)今の客だって本当のところはそうなんでしょうが、昔の芸者衆や奥様たちのように芸の素養がありませんから分かりませんし、まして『わたしゃ、あの役者をみると買ってみたくなるわ』なんてことは言いにくい」

それに加え観客もある程度踊りや三味線、小唄程度の経験が無いと舞台は完全に理解できない。そして、それら芸や作法の淵源は茶の湯であるらしい。要するに、観客と演者の境界が曖昧なんだと。

後半で昭和21年に発表された桑原武夫の「第二芸術」に言及しています。私は寡聞にして知りませんでしたが、第二芸術論というのは一口で言えば、西洋のものは芸術であるが、日本の伝統的な芸能は単なる芸事であって、西洋より劣る。特に俳諧などというもは誠に低劣なものであるという論のようです。

オペラ座のような劇場で青筋立てて声張り上げるのは玄人のみが出来る技ですが、お座敷での小唄、端唄、或いは和歌俳諧、川柳、狂歌などは素人でもそれなりに楽しめる。すなわち玄人と素人の境界が曖昧であることが桑原先生はお気に召さなかったのでしょうか?ハコちゃんは第二芸術論については単に紹介するだけで是も非も述べていません。本音のところはどうなんでしょう?

そして結論は本書の幅広の腰巻にある通り、貯金なんでせこい事は考えず「大事なのは身銭を切ること」でした。

Kiss And Say Goodbye / Manhattans

毎日のようにデートを重ねて来た彼女に別れを告げなければならない時が来た。彼にはobligation(義務)がある。この義務とは兵役でしょう。

ただ、キスして別れよう。歩き始めたら振り返っちゃ駄目だ。そして、誰か素敵な彼氏を見つけてくれ。

映画の一場面のような情景が浮かんできます。こういうテーマの曲は日本にはありませんが、マンハッタンズの語りと甘い歌声が余計に悲しい状況を増幅しているような気がします。

良く出てくる I miss you という表現は日本語には訳しにくいです。失敗するとか外すとかいう意味でよく使われますが、語感としては本来あるべき所にあるべきものが無いという感じだと思います。ここに君が居る筈なのに、いない。よって寂しいという訳になるんでしょう。

しかし、戦争に行っても必ず元気な姿で戻ってくるから、いつまでも僕を待っていてくれ、というのか、この歌のように、もうどうなるか分からないから誰か良い人を見つけて幸せになってくれというのか?答が出る問題ではありませんが、誠に切ない問いです。尚、邦題は「涙のキッス」です。

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爪/ピーター

知らずにこのジャケットを見た人は、ピーターだと気づかないんぢゃないでしょうか。

このアルバムに興味を持ったのはまずジャケットの良い事。ジャケ買いという言葉がありますが、ジャケットの良いCD、レコードはやはり内容も良いようです。次に伴奏がショーロであること。ブラジルの古典的音楽形式であるショーロを継承している田嶌道生氏がメインの伴奏とアレンジを担当しています。

最近はボサノバから入ってブラジル音楽をあれこれ摘み食いしてます。毎週日曜日17時から17時55分迄、滝川クリステルがDJやってる「サウジ・サウダージ」(J-WAVE)を聞いて勉強していますがポルトガル語はやはり意味不明で中々奥に進めません。滝川クリステルはお・も・て・な・し、だけかと思ってましたがポルトガル語も出来るんでしょうか?時々歌詞の意味を説明してくれてます。

「私が愛した女たち」と題されたこのCDには、ピーターの敬愛する越路吹雪とのデジタルデュエットで「誰もいない海」、テレサ・テンとのデジタルデュエットで「つぐない」。デビュー曲の「夜と朝のあいだに」の新バージョンもあります。その他全12曲、良い選曲だと思います。その中で一曲選ぶのは難しいところですが、私の趣味で平岡精二 作詞・作曲の「爪」を選びました。これは確かに名曲です。全体に月並みな表現ですが、退廃的、耽美的な雰囲気が漂っており、ガキが入り込めない世界が出来上がっています。

ラブユー貧乏/ロスプリモス

youtubeで検索してみたら当時の映像がありました。youtubeというのは実に凄い。世の中を変えたような気がします。


<2005.03.20>

かつて大ヒットしたロスプリモスの”ラブユー東京”の替え歌です。おれたちひょうきん族に出演していた何人トリオのMr. オクレが得意の貧乏ネタを披露している時にロスプリモスも共演していました。これが結構受けが良く、レコードにまでなってしまいました。ロスプリモスは照れもせず、ボケもせず、真面目に普通に歌っているところに好感が持てます。尚、Mr. オクレがぼやく”セリフ編”もあります。

トホホ度 ★★★
お笑い度 ★★★☆
意味不明度 ★☆

 

しらたきとネギと お豆腐白菜 肉は入ってないわ 私の人生
お金だけが 生き甲斐なの 忘れられない
ビンボー ビンボー 涙の貧乏裸電球が 切れてしまったの 古い虫歯がうずく 私の三畳
明日からは お金なしで 生きてゆくのね
ビンボー ビンボー 涙の貧乏靴下の穴の 穴の気持ちが 何故か無理なくわかる 私の涙
お馬鹿さんね お金だけ 信じた私
ビンボー ビンボー 涙の貧乏

Let the good times roll / Kalaeloa

毎週土曜日午前8時から10時まで、INTER FM897で”iHeart Hawaii”という番組が放送されています。DJは南美布という女性で、時折現地DJの声も入ります。

この番組はハワイの現状をかなり細かく伝えてくれており、アラモアナセンタでバーゲンが始まったとか、ワイキキのどこかに新しいパンケーキ屋さんが出来て、行ってみた、とか、聞いていると自分がワイキキに居るような錯覚に陥ります。

我々ハワイアンというとアロハ・オエとかカイマナヒラとかを思い出しますが、こういう古典的ハワイアンとは別に今のハワイ音楽を聞く機会は意外に少ないようです。この番組は当然今のハワイアンを聞かせる訳ですが、聞いているとハワイアンとレゲエを混ぜたような歌が多く、これが何ともユルイ雰囲気になり、聞いていてボーットしてしまいます。良い感じなんですが、やはりハワイとジャマイカの混合では少々違和感も感じます。

このKalaeloaの歌にはレゲエ風味は無く、もっとも真っ当に進化したハワイアンという感じがします。ギターとウクレレという組み合わせがハワイらしく、沖縄でギターと三線のバンドがいるのと同じ感覚でしょうか。全体的に乗りやすい仕上がりで、歌詞も能天気型で楽に楽しめます。
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サージエント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/大場久美子

この歌は、写真のベスト盤に入っているのですが、初出が分かりません。何かの曲(EP)のB面かと思いましたが、不明です。ネット検索によればこれにしか入っていないと断言している人もいるのですが、ベストアルバム用に作ったというのも信憑性が薄いです。
何はともあれ、昭和の迷盤中の迷盤ですので、永く後世に伝えていきたいものです。
……………….
<2005.3.12>
ビートルズの数あるアルバムの中でもサージエント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドは一番の傑作ではないでしょうか?あろう事かこのアルバムの劈頭を飾る名曲を、なんと音程やリズム感に独自のセンスを持つ大場久美子がカバーしていたんですねぇ。しかも、「久美子のロンリーハーツクラブバンド」と言い放つ度胸が素晴らしいです。世界中見回しても、この曲に自分の名前を付けちゃったのは彼女だけではないでしょうか?編曲の妙もあり、その破壊力たるや凄まじく、悪趣味なbonywalkのテイストを満足させるに十分な仕上がりです。久々のトホホ度満点。

トホホ度 ★★★★★
お笑い度 ★★★☆
意味不明度 ★★★☆