疫病2020/門田隆将著

読書のお時間

新型コロナウイルスに対する日本、中国、台湾の対応を綿密に取材し冷静に分析しています。コロナ禍は騒ぎが起きてからまだ半年ちょっとであり、著者自身のツィッター投稿も参照されているので、これまでのいきさつが思い出されます。

発生源の中国では何が起きていたのか。情報隠蔽です。最初の発見者、注意喚起した医者は死亡したり、行方不明になっています。発生源はコウモリで海鮮市場からと発表されましたが、市場ではコウモリは扱われていない事が確認されており、やはり武漢病毒研究所から漏れた可能性が高いようです。この研究所のP4実験棟(P4は最も危険な細菌、ウイルスを扱う)はフランスと米国の協力で2015年に設立されました。しかし2018年に米国とフランスの共同査察で実験棟での管理の杜撰さ、及び細菌兵器開発の恐れがあるとして両国とも手を引きました。P4 からのウイルス流出については内部告発があり、また死亡した実験動物の処理費用を着服し、食用に売却して日本円にして約1億円の利益を得た事件が発覚しました。またWHOのテドロス事務局長が中国べったりできちんと機能しないという問題も有りました。この時点で中国もWHOも人人感染は無いと明言していました。

台湾の対応は機敏でした。昨年の暮には武漢ウイルスの発生を把握しています。台湾は中国国内のヒューミント(スパイ)や中国国内のサーバーのハッキング等から情報を入手していたようです。蔡英文政権は武漢が封鎖される前日の1月22日に武漢への渡航を禁止し、同時に中国へのマスク輸出を禁止しました。中国が輸入したマスクを高額で転売する事を見抜いていたからです。1月24日には中国本土への団体旅行禁止し、台湾にいた中国人を徐々に帰国させました。また、2月11日の春節明けの始業日を二週間延期しています。以下は著者のツィッター(2月26日)です。「1月初旬、『人人感染』を前提に対策を始めた台湾当局。武漢での感染が『噂』程度だった1月2日、すでに専門家会議で検疫や医療機関からの通報を強化。SARSの2003年、私は見舞客も隔離された台北中華路の和平病院の騒動を取材した。台湾はあの時の教訓を見事に生かした。それが国家。」

我が官邸は迷走。防疫として第一に考慮すべき中国からの入国禁止は二階幹事長肝入りの習近平国賓来日が予定されており、春節のインバウンド観光客を止める事による経済的損失が膨大という理由で見送られました。その間国会では野党が「桜を見る会」の追求に血道をあげており、危機意識は皆無でした。2月初旬には世界134ヶ国が中国全土からの入国を禁止したが、我が国は3月5日、習近平の国賓来日延期が決定され、翌日から中国人の入国が禁止されました。その他の国については3月24日の東京五輪の延期決定以降です。

しかし、政府は2月17日までに武漢にチャーター機5便を派遣し、800人余の日本人を救出した。日本政府みずから邦人を海外から直接救出したのは史上初である。本来ならば自衛隊機或いは政府専用機を派遣すべきであるが憲法の制約があり、民間機の言わばボランティアで実施した。安倍首相の決断で、政府、普段何もしない外務省、北京大使館が頑張った成果であった。

最大の問題は厚生労働省である。殆どの国民は厚労省が国民の健康を守ってくれると思っているが、どうも違うようです。私見ですが、役人が仕事をする動機(モーティベーション)は
 ・出世(事務次官レース)
 ・天下り(できるだけ楽に稼げる処を確保)
 ・省益(予算捕り)
どこにも国民のためという視点はありません。本書にはコロナ禍以外にも、これまでの厚労省の無策・無能ぶりが紹介されています。武漢肺炎に効果があると言われるアビガンは政府が途上国へ相当数寄付して喜ばれています。しかし、肝心の国内での薬事承認がおりていません。アビガンは富士フイルムの子会社が製造元であり、これまで厚労省とのパイプがありませんでした。そこが天下りを受け入れないので、厚労省が嫌がらせをしているようです。天下りを大量に受け入れているミドリ十字という会社がどういうことになったかは本書に詳述されており、それが分かっているからオイソレと天下りという訳にはいきません。

3月を過ぎても官邸、厚労省、或いは東京都知事らに危機感は希薄でした。根本を煮詰めれば日本には危機管理意識の無い「お花畑」状態が続いています。憲法には国が国民の生命と財産を守るとは明確に書かれていません。また、緊急事態に対する緊急事態条項が無いのは先進国では日本だけでしょう。役所の怠慢は厚労省だけでは有りません。「面従腹背」が座右の銘であると豪語する前川喜平前事務次官による文科省天下り問題を見ても国民の教育をまともに考えているとは思えません。最近、文科省の教科書検定委員に北朝鮮のスパイが潜り込んでいる事が発覚しましたが、文科大臣は火消しに回るだけで、抜本的な改正をする気はないようです。

今年度の初めからワイドショーを毎日みていますが、朝から晩までコロナ、コロナでひどいものです。結局;
→視聴率を上げるために危機感をあおる。
→これをみた奥様方は自粛する。
→商品の売れ行きが落ち、殆どの企業が減収
→CMの出稿が減りTV局は減収
→出演料の高いみのもんた、久米宏は引退。秋の改編で安藤優子、小倉智照もお払い箱。出演料削減のためフリーアナウンサーは雇止めして局アナを使う。
「コロナで騒げば、小倉のカツラ飛ぶ」という笑い話です。

閑話休題。コロナ禍は未だ終息した訳ではありませんが、これまでの経緯を丁寧に取材し、コロナの問題だけでなく、日本がなぜこんなことになっているのかがよく纏められています。また、問題のある処は実名を挙げているので、より臨場感が増しています。ノンフィクションとてしては小池百合子と同じ位、面白く、是非一読をお勧めします。