経済で読み解く日本史❸江戸時代/上念司

日本史が高校で必修でなく(先進国の高校で自国の歴史が必修で無いのは日本だけ)自分はまともに日本史を勉強したことが無い。しかし歴史には興味がある。本書は人間の行動を縛る「銭」すなわち経済の動きを主軸にした新しい日本史である。経済の専門書に同様の論文は多々ありそうだが私のような素人にも分かるように平易に解説してくれてます。

本シリーズは文庫版の5分冊になっており
第1巻<室町・戦国時代>
第2巻<安土・桃山時代>
第3巻<江戸時代>
第4巻<明治時代>
第5巻<大正・昭和時代>

第1巻から読み始めるべきなんでしょうが、まず落語を通して馴染みの深い第3巻<江戸時代> から始めてみました。

当時は勿論経済学の理論は無く江戸時代の約260年間、幕府及び諸大名は色々な試行錯誤を繰り返し、成功と失敗を繰り返してきた。これらの結果を纏めると
●世の中はモノとお金のバランスによって成り立っている。
●お金が不足すればデフレになり、景気が悪くなる。
●景気が悪くなると普段は見向きもされない危険な思想に人々は救済を求める。

江戸時代初期の国家予算は約3,000万石であったが、幕府の天領での税収は400万石しかなかった。不足分を埋めるため、家康は全国の金山、銀山を手中に収めた。三大将軍家光までは独占した金銀を浪費し、幕藩体制を強固なものにした。教科書では浪費はイケナイ事となっているが、経済は発展し、八代将軍吉宗の頃に農業生産量はピークに達した。しかし、それ以降は金山、銀山を掘りつくしてしまい、財源不足が顕在化してきた。要するに税収を幕府が一括して徴収する中央集権体制になっていなかったのが根本的な問題であった。

その後幕府と諸大名は常に財政難と戦っていた。例えば幕府の財政難を克服するため改鋳が行われた。これは小判二枚を溶かして混ぜ物を加え、小判三枚にする。教科書ではイケナイ事だとされているが、これで幕府のお金の量が1.5倍になったので好景気となった。消費も喚起され米や米以外の作物も増収となった。しかし、享保の改革、寛政の改革等の緊縮財政政策によって不況になる。それ以降、著者云う処の「緊張と緩和」の繰り返しであった。

江戸も中期以降になると武士より町人の方が財力が豊かになる。幕府は治山治水、インフラ整備等の公共事業に掛かる費用を諸大名に拠出させるようになるが、大名とて火の車。いやいやながらも借金で賄うしかない。しかし、借金踏み倒しは頻繁に発生し、特に肥後の細川様は借金棒引きを繰り返し、信用を失ったようである。

江戸時代も末期になってくると開国を求める諸外国が日本に接近してくる。財政難による国難は開国を迫る諸外国が悪いという考えから、攘夷という思想が現れる。最後は開国せざるを得ず、明治維新となるが諸大名は借金が棒引き出来るので、廃藩置県という荒療治を受け入れたのではないだろうか。

その他薩長同盟も経済の観点から面白く解説されています。教科書では江戸時代は農民、町民が虐げられていた暗黒時代だと言われているが、実際には高度な通貨制度も整備され、町人が力を付け、軍事力も十分で外国に比べてもかなり良い状況だったのではないでしょうか?

現代でも借金はイケナイ、浪費はイケナイとして財務省主導の緊縮財政論がマスコミで流布されているが、景気は緊縮財政時に不況になっており、著者は現代においても緊縮財政ではデフレから脱却できないと云いたいのだと思います。

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