タブレット純のエレジー・エナジー歌謡曲/タブレット純著

タブレット純氏は1974年生まれでありながら、1950, 60, 70年代の歌謡曲のレコード収集と博識には目を見張るものがあります。小学6年生の時にムード歌謡に目覚め、初めて買ったレコードが鶴岡正義と東京ロマンチカの「しのび逢う町」だったそうです。高校を卒業して古本屋勤めの後、憧れの和田弘とマヒナスターズに入団。しかし和田弘の急逝により解散。その後はギターを持ってピン芸人として活躍しています。

この本はタブレット純の二冊目です。一冊目は自分の番組(「タブレット純の音楽の黄金時代」ラジオ日本 土曜日 17:55~)でかけた曲の紹介でした。今回も彼の好きな歌が並んでいますが、多少趣が違います。章立てを見ると;

第1章 人生がどん底の時に聴く
第2章 誰にも明かせない苦しみとともに聴く
第3章 挑戦してもうまくいかないときに聴く
第4章 恋の切なさ、むなしさを感じたときに聴く
第5章 明日に向かって歩き出すときに聴く

各章に合わせて自身が選曲し解説しています。しかし評論家的でなく、それぞれの歌に込める自身の思いが切々と綴られています。言い換えると歌を題材にして自分を見つめなおした私小説と言えそうです。

勉強はダメ、運動神経ゼロ。得意技は忘れ物。当然いぢめられっ子。ラジオから流れる歌に涙し、暗い歌ばかり聞いている。そんな自分が恥ずかしく、家に誰も居ないときに屋根裏部屋でレコードを密かに聴きながら再び涙ぐんでいた少年時代。

そんな彼にも青春はありました。初めて告白した相手が男子。全く相手にされません。女子に恋したこともあります。しかし8年間付き合った彼女はある日突然いなくなってしまったそうです。歌手になってからは記憶を飛ばすまで飲まないと眠れない。その酒を抜くためか、各地の銭湯めぐりが彼を落ち着かせる唯一の時間のようです。

私は歌を聴くときに、メロディとアレンジに注目(注耳?)してしまい、歌詞は余り入っていませんでした。タブレット純はその逆で暗い歌の歌詞に自身を投影し、或いは入り込み、涙ぐむという聞き方でこの物語が生まれました。これから私も少し真似してみようかと思ってます。

彼のラジオは毎週録音して聞いています。結構マニアックで知らない歌も流れてきますが、彼の選曲と語りがやさしく、今風に言うと癒されます。下にリンクしたのは10月12日放送分です。この本が出たばかりなので嬉しそうに宣伝しています。

タブレット純の音楽の黄金時代 10/12
しのび逢う町(B面)/鶴岡正義と東京ロマンチカ