日本国紀/百田尚樹著

平成30年、出版界最大の事件がこれだ。百田尚樹氏の「日本国紀」は当初11月15日発売予定で10月15日にアマゾンや楽天で予約受付を開始した。すると予約が殺到し、翌16日にはアマゾンで書籍全ジャンル(本)でベストセラー第1位となり、その後、18日間連続1位を維持した。版元の幻冬舎は初版10万部という強気の販売目標であったが予約受付中に増刷を数度行い、発売日を幻冬舎創立記念日である11月12日に前倒して、なんと初版40万部の発売となった。尚、翌13日は更に5万部増刷が決定した。

予約の段階では目次を見たり、中をパラパラめくって見たり出来ない。これといった宣伝もしていない。要するにどんなものかも分からないまま増刷を重ね40万部が売れた事になる。これは昨年の村上春樹著「騎士団長殺し」に次ぐ記録となる。この売れ行き(予約)に気を良くした幻冬舎は11月に入って主要全国紙に全面広告を掲載した。私が知る限り、1書籍の全国紙全面広告は宮沢りえの「サンタ・フェ」以来であろう。「サンタ・フェ」は毛が見える写真が2、3枚ある、という事で話題になり150万部以上売れた。本書は勿論そこまでは無理と思うが、その半分くらいはいくんぢゃないだろうか。

「日本国紀」とは大仰な書名であるが、要は日本通史である。百田氏はこれを1年かけて書き上げた。世の中にまともな日本史がない。他の多くが自虐史観に染まり、日本人の素晴らしさを表現できていない。そうならば自分で書こうと一念発起した。他の日本史と違うのは第7章「幕末~明治維新」から「平成」までが全体の約半分を占めている。特に明治維新から戦後復興までの一連の流れが分かりやすい。日本史を高校時代全部やった人でも明治以降は入試に出ないとか言って勉強しなかった人が多い。私は映画、TV、歴史小説などによる断片的知識しかなかったが本書のお陰でそれらが繋がったような気がする。

私が高校生の時も現在に於いても日本史は必修科目になっていない。およそ先進国で自国の歴史が必修科目でない国はない。その原因は本書にも出てくるGHQのWGIP (War Guilt Information Program)である。WGIPはGHQが日本人に贖罪意識を植付け、日本国の伝統を分断する事を目的とした洗脳教育、情報操作である。このため、日本の歴史を教える事も憚られる事となり、それが70年以上たった今でも受け継がれている。WGIPのくびきから脱する試みもあるが、昨今の歴史教科書を見ると更に悪化しているように思われる。例えば元号を全く使わない日本史教科書があり、元寇の「文永の役」、「弘安の役」は無く、西暦だけで記述されている等々。

本書がベストセラーになったのは百田氏が人気作家という事もあるが、やはり、昨今の歴史教育、思想に嫌気がさして、こういう日本史を求める人が増えている証左であろう。約500頁あるが、1,800円(税抜)なのでそれほどお高くない。一読をお勧めする。

元祖 高木ブー伝説/筋肉少女帯

先日久々にラジオでオーケンこと大槻ケンジ氏の声を聞いた。彼の主宰する筋肉少女帯は今年が30周年らしい。よくもまあ、こんなバンドが30年も続いたもんだ、とある種の感慨が湧いてくる。

このバンドは音楽的にはヘビメタとかパンクに分類されている。私は以前メタルとかヘビメタと呼ばれるロック、ジャズで言えばフリーとかアバンギャルドとか呼ばれる類の音楽は苦手であった。只、タモリがスポーツジャズと命名した山下洋輔トリオはフリーであったが、面白かった。演奏中酒飲んで笑っていれば良いという正しい鑑賞方法を素早く自分のものにしたからであろう。

しかし、最近はこういう音楽が苦にならなくなってきた、てゆーか面白いと思う。勿論ライブハウスで飛び跳ねたり、頭振ったりする元気はないが。歳のせいか?但し、クラシック音楽で云うところの現代音楽にはついていけない。これが面白いと思うようになるのは、私の場合、はっきりとボケた頃ではないでしょうか?

ヘビメタやってる人というとなんか怖いというか、危険な感じがしますが、オーケンは全くその逆。デビュー以来、終始一貫くねくねしています。オカルトが大好きで、未だに若い感じがします。

これは彼ら唯一のヒット曲で、勿論意味不明です。オーケンは色々と理屈付けてますが、半分冗談でしょう。こういう歌がアリとなったので野沢直子の「おーわだばく」みたいな歌が出てきたわけです。筋肉少女帯はある種のパイオニアと言えます。

 

トホホ度 ★★★★
お笑い度 ★★☆
意味不明度 ★★★★

トラウマ恋愛映画入門/町山智浩著

著者は雑誌編集者を経て現在米国加州在住の映画評論家である。本書は恋愛映画評論集であるが、好きあった者どうしが周囲の反対にもめげず、ついにゴールインできた、というようなハッピー・エンドな映画では面白くない(から取り上げない)。もう少し深い、幸福と不幸が入り混じり見た後、尾を引くようなトラウマ的恋愛映画集である。

まず「恋愛オンチのために」と題した前書きで著者は恋愛映画を以下のように喝破している。

「実際、大部分の人にとって、本当に深い恋愛経験は人生に二、三回だろう。確かに何十もの恋愛経験を重ねる人もいるが、その場合、その人の人生も、相手の人生も傷つけずにはいない。そもそも、恋愛において、そんなに数をこなすのは何も学んでいない証拠だ。トルストイもこう言っている。
『多くの女性を愛した人間よりも、たった一人の女性だけを愛した人間のほうが、はるかに深く女性というものを知っている。』
恋愛経験はなるべく少ない方がいい。でも、練習できないなんて厳しすぎる?だから人は小説を読み、映画を観る。予行演習として。」

予行演習として恋愛映画を観ると言っているが100%首肯はできない。しかし主人公のスタイルや仕草に憧れ真似することはある。あながち外れているとも言えないようだ。

本書では以下の22本が選ばれている。
(制作年順に並び変えた。下線は見た映画)

 1.『逢びき』1945
 2.『道』1954
 3.『めまい』1958
 4.『幸福(しあわせ)』1965
 5.『アルフィー』1966
 6.『ラストタンゴ・イン・パリ』1972
 7.『赤い影』1973
 8.『愛のコリーダ』1976
 9.『アニー・ホール』1977
10.『パッション・ダモーレ』1980
11.『ジェラシー』1980
12.『隣の女』1981
13.『日の名残り』1993
14.『永遠の愛に生きて』1993
15.『チェイシング・エイミー』1997
16.『ことの終わり』1999
17.『アイズ ワイド シャット』1999
18.『エターナル・サンシャイン』2004
19.『アウエイ・フロム・ハー 君を想う』2006
20.『リトル・チルドレン』2006
21.『ラスト、コーション』2007
22.『ブルーバレンタイン』2010

ウディ・アレンの「アニー・ホール」は最も好きな映画の一つで何度も観た。全て分かった気でいた。しかし
「ただし、アレンが住むのはセントラル・パークの東だ。パークの東側は保守的でリッチ。西側は中産階級のリベラルが多い。」
こういうディテールやユダヤ人に関連する部分は聴いてみないと分からない。アレン自身がリベラルと言いながら東側に住んでいるという所が面白いのだろう。「アイズ・ワイド・シャット」のトム・クルーズとニコール・キッドマンご夫妻は確かに西側に住んでいた。

試しにケイト・ウィンスレット主演の「リトル・チルドレン」を見直してから解説を読んでみた。ストーリーの展開に沿って二組の夫婦の動き、ディテールが解説され、ついには不倫になってしまう2人の感情の動きが良く分かる。また原作の背景や関連する作品の説明も織り込まれており、ちゃんとした評論を読んだという気にさせられた。

最近の映画解説は面白くない。例えば最近話題になった「カメラを止めるな」を水道橋博士が説明したが
「ゾンビ映画を撮っていて、色々あってすごいどんでん返し、ネタバレになっちゃうので、これ以上言えない。とにかく、面白いから見てください。」
ネタバレで突っ込まれるのを恐れるあまり、何も伝わらない。てゆうか、ネタバレを理由にテキトーにお茶を濁しているとしか思えない。

著者は俳優、監督、原作、脚本は勿論のことそれらに関わる背景についても豊富な知識がある。「まぁ~皆さん、ご覧になりましたか、コワイデスネ、コワイデスネ」が懐かしい淀川長治の解説も楽しかったが、こちらはヨドチョーさんとは全く違う読み物になっている。深読みが過ぎるんぢゃないの、と思う部分もあるが、彼の解説を読むと未見の映画も見たくなってくる。著者は最近、政治的発言をSNSに頻繁に挙げているが、これらは非常に浅薄で見るべきものはない。是非映画一本に絞ってもらいたいものだ。

チック・タック・ゴーゴー/晴乃チック・晴乃タック

今年も流行語大賞のノミネートが発表された。候補の中には選ばれても表彰する対象が不明な語や不名誉で表彰されにくい語、例えば「悪質タックル」等があり、どうもスッキリしない。本来の趣旨を逸脱してしまった感がある。

そもそもノミネートされた語数が多すぎて全部は知らない。「TikTok」は15秒の動画を共有するSNSらしいが全く分からない。分かるどころか「TikTok」と聞いて晴乃チック・タックを思い出してしまった。晴乃チック・タックは「どったの?」とか「いいじゃなぁ~い」とかいう、今から思えばどうでも良いようなギャグを連発して大変な人気者になり、映画やTVに頻出していた。

ご両人は私の知る限り4曲吹き込んでいるが、その中でこれが一番ヒットしたようだ。芸人さんの歌はギャグや珍フレーズで笑いを狙うのが常道であるが、この歌はこれといったギャグもひねりも無く、今市面白さに欠ける。曲調は青春歌謡という感じで、ひょっとしたら本気でその線を狙ったのかとも邪推してしまいす。カテゴリーは「珍盤・奇盤」にしてますが、評価はかなり低くなりました。

トホホ度 ★★☆
お笑い度 ★★
意味不明度 ★★

タブレット純のエレジー・エナジー歌謡曲/タブレット純著

タブレット純氏は1974年生まれでありながら、1950, 60, 70年代の歌謡曲のレコード収集と博識には目を見張るものがあります。小学6年生の時にムード歌謡に目覚め、初めて買ったレコードが鶴岡正義と東京ロマンチカの「しのび逢う町」だったそうです。高校を卒業して古本屋勤めの後、憧れの和田弘とマヒナスターズに入団。しかし和田弘の急逝により解散。その後はギターを持ってピン芸人として活躍しています。

この本はタブレット純の二冊目です。一冊目は自分の番組(「タブレット純の音楽の黄金時代」ラジオ日本 土曜日 17:55~)でかけた曲の紹介でした。今回も彼の好きな歌が並んでいますが、多少趣が違います。章立てを見ると;

第1章 人生がどん底の時に聴く
第2章 誰にも明かせない苦しみとともに聴く
第3章 挑戦してもうまくいかないときに聴く
第4章 恋の切なさ、むなしさを感じたときに聴く
第5章 明日に向かって歩き出すときに聴く

各章に合わせて自身が選曲し解説しています。しかし評論家的でなく、それぞれの歌に込める自身の思いが切々と綴られています。言い換えると歌を題材にして自分を見つめなおした私小説と言えそうです。

勉強はダメ、運動神経ゼロ。得意技は忘れ物。当然いぢめられっ子。ラジオから流れる歌に涙し、暗い歌ばかり聞いている。そんな自分が恥ずかしく、家に誰も居ないときに屋根裏部屋でレコードを密かに聴きながら再び涙ぐんでいた少年時代。

そんな彼にも青春はありました。初めて告白した相手が男子。全く相手にされません。女子に恋したこともあります。しかし8年間付き合った彼女はある日突然いなくなってしまったそうです。歌手になってからは記憶を飛ばすまで飲まないと眠れない。その酒を抜くためか、各地の銭湯めぐりが彼を落ち着かせる唯一の時間のようです。

私は歌を聴くときに、メロディとアレンジに注目(注耳?)してしまい、歌詞は余り入っていませんでした。タブレット純はその逆で暗い歌の歌詞に自身を投影し、或いは入り込み、涙ぐむという聞き方でこの物語が生まれました。これから私も少し真似してみようかと思ってます。

彼のラジオは毎週録音して聞いています。結構マニアックで知らない歌も流れてきますが、彼の選曲と語りがやさしく、今風に言うと癒されます。下にリンクしたのは10月12日放送分です。この本が出たばかりなので嬉しそうに宣伝しています。

タブレット純の音楽の黄金時代 10/12
しのび逢う町(B面)/鶴岡正義と東京ロマンチカ

組曲:冬の情景/所ジョージ

今年も11月となり、冬が迫ってくる今日この頃です。この時期の名曲といえばなんといっても所ジョージさんの「組曲:冬の情景」でしょう。この歌は所さんのデビューシングルである「ギャンブル狂騒曲」のB面です。所さんはシンガーソングコメディアンとしてデビュー以来、約40年間、マイペースないい加減さは終始一貫崩れていません。本気なのか、冗談なのか、マジなのか、お笑いなのか、その境目あたりを上手く立ち回っている感じです。これまでこれといった醜聞も聞かず、派手な夜遊びも無く、ひたすら世田谷ベースでアメ車を弄って喜んでいる姿は立派なもんだと言わざるを得ません。

所さんの歌はどれを聞いてもメロディは素直で歌詞は半笑いできるので何となく覚えてしまう、しかしカラオケで歌うほどでない、というところがチョード良いんでしょう。A面のギャンブル狂騒曲もリンクしておきます。

 

トホホ度 ★★★★
お笑い度 ★★★☆
意味不明度 ★★★☆

組曲:冬の情景

ギャンブル狂騒曲