週刊文春「シネマチャート」全記録/週刊文春編

大昔は多くの本を読んでいる学生が偉いとされたものであるが、自分の学生時代は沢山映画を見ている事を自慢する輩が多かった。その頃の私はレコードを買う事ばかりで、余り映画を見ていない。よって映画好きのJDと話が合わず、恋人どころか友人にもなれないという残念な事案も発生した。最近はTSUTAYAで借りたり、映画館に行ったりして、結構見ているが、やはり若いころ映画を余り見ていないという事実が我が人格形成にどのような好又は悪影響を及ぼしたのか、考えてみたが、良く分らない。

この本は週刊文春に連載されている映画評を再集計し、洋画ベスト200、邦画ベスト50を選出したものである。洋画のNo.1はルキノ・ビスコンティ監督の「イノセント」。見た覚えはあるが良く覚えていない。邦画のNo.1は大島渚監督の「愛のコリーダ 2000」。これは日本初公開時に掛かっていたボカシの殆どを取って、オリジナルに近づけたそうである。以前見えなかったものが見えるようになったのは誠に喜ばしい事ではあるが、これが邦画No.1というのはどうも違和感が残る。

本書の巻末に年度毎の興行収入ベスト3、キネマ旬報ベスト3が掲載されている。これと本書のリストを見比べるとかなりの違いがある。例えば興行収入上位の「スター・ウォーズ」、「スーパー・マン」、「インディー・ジョーンズ」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「ジュラシック・パーク」、「タイタニック」、「ハリー・ポッター」、「ミッション・インポッシブル」、「パイレーツ・オブ・カリビアン」等々の有名な映画は本書のベスト200に入っていない。

私は「売れているものはやはり良いものだ」と考えており、ビルボードのTOP40や書籍のベストセラー、TVの視聴率等は常に気にしている。小学生の頃はTVのザ・ヒット・パレードのランキングを毎週一所懸命ノートに書き写していた。しかし、本書を見ると文春の評者はこれらの売れている映画には興味が薄いようで、見下している訳ではないと思うが、やや通好みの評価になっている。例えば同率1位の「地獄の黙示録」は良しとしても同じく1位の「フンクイの少年」、「トントンの夏休み」などは全く分からない。これに比べ、キネマ旬報のリストは興行成績上位の作品がリストアップされており自分の感覚に近い。

これから益々暇になるので、暇つぶしに映画を見るためのガイドと思ってこの本を買ってみたが、どうもしっくりこない。最初からキネマ旬報のベストテンを検索すべきであった。

朝の蝶/鶴岡雅義と東京ロマンチカ

この歌は鶴岡雅義と東京ロマンチカが歌ってますが、ボーカルは三条正人では無く、縣浩也(あがたひろや)という人だそうです。そのせいか、曲調は敏いとうとハッピーアンドブルーという感じです。鶴岡雅義お得意のレキントギターのソロもありません。

歌詞は軽いリズムに乗ってさらっと流れていきますが、突っ込みどころ満載です。
「朝の蝶だと私を抱いた 広い背中が鏡に映る」<—鏡張りの部屋に居るようです。
「掘れても~惚れてもないのに、男ってあんなに激しくなれるのね」<—御意

夜の蝶はどこの盛り場でも毎夜遊弋していますが、朝の蝶というのは初めてその生態が確認されたようです。この歌はカラオケで無く、最近息を吹き返してきたスナックのカウンターで新入りの娘をチラ見しながらニヤニヤ顔で歌うのにピッタリな歌ではないでしょうか。

トホホ度 ★★★☆
お笑い度 ★★★
意味不明度 ★★

孤狼の血/柚月裕子著

最近映画「孤狼の血」の宣伝がTVやネットで繰り返し放送されている。最初はボヤッと見ていたが、著者の柚月裕子が「『仁義なき戦い』なくしてはありえなかった作品」と述べているのを知って興味が湧いた。自分はヤクザ映画を沢山見ている訳ではないが「仁義なき戦い」には強烈な印象がある。著者はこれをレンタル店で借りて「世の中にこんな凄い映画があったのかと、脳天をかち割られるほどの衝撃を受けた」ので、すぐにDVDで「仁義なき戦い」全巻を購入したそうです。

本作は「仁義なき戦い」同様、広島県を舞台に県警のベテラン刑事大上(映画では役所広司)とその部下になった新米刑事日岡(松阪桃李)が架空の町である広島県呉原市で暴力団抗争を防ごうと必死の立ち回りを繰り広げる。そこに居酒屋の女将(真木よう子)が絡んでくる。大上は暴力団の内情を通じていると共に癒着が噂されており、日岡は大上の違法捜査に不服ながらもついていく。

このプロットは名作と言われる「県警対組織暴力」(笠松和夫脚本 深作欣二監督 菅原文太 松方弘樹 梅宮辰夫 佐野浅夫等)に倣っており、ここでは菅原文太が暴力団と癒着した刑事を演じていた。これは実録物であるが、本作は完全に創作である。全編に渡り、だれ場が無く、現場での捜査、組の事務所に乗り込んでの交渉、県警での取調べなど緊張感をもって進行していく。最終章近くになって県警の汚職が明らかになり「ナヌ!」最後に「エェ!」という意外な結末。著者の巧みな構成力を感じる。最後の2頁のプロローグも洒落ている。

DVDで初めて「仁義なき戦い」を見た女性が取材の賜物とはいえ、これだけのヤクザ小説を書けるとは全くの驚きである。広島県警内の上司と部下のやり取り、ヤクザ組織の構成や抗争、広島弁のヤクザ言葉等々大したものだと思う。

話は変わるが、昨年5月に広島県警で証拠として保管していた8,500万円が盗まれるという事件があった。どう見ても県警内部の犯行としか思われず、職員全員を虱潰しにあたればすぐに犯人を検挙出来そうなものであるが、未だに解決していない。この小説を読んで、同じ広島県警という事もあり、この事件をふと思い出した。

もてたつもりの数え唄/梅宮辰夫

最近、人生に「モテ期」が3度ある、と聞くが、本当にそうか?自分に果たしてモテ期があったのか、と考えてみるに、特に思い当たる処が無い。しかし「モテたつもり期」なら確かにあったと思う。「モテたつもり期」とは要するに手玉に取られた時期。これは古今東西何処にでもあるんだろうが、古今亭志ん生は落語の廓話のマクラとしてこんな話をしている。

一人の芸者が並んだお膳の前で3人の客を相手する。左の客の膝に手を置きながら真ん中の客に酌をし、その時に右の客の目を見てにこりと笑う。左の男は「俺の身体に触っているのは、もしかしてだけど俺に抱かれたいのか?」真ん中の客は「まず俺に酌をしてくれるのは俺に惚れている証拠だ」右の客は「芸者だから、色々営業は大変だろうが、俺の顔を見て愛想を振りまくからには俺が本命だ」これで3人がコロリと参ってしまう。手練の芸者にしてみれば簡単なもんだろう。

この歌は将に「もてたつもり」を歌にし、浜口庫之助が上手くメロディを付けているが、もう少し歌詞に工夫が欲しかった気もする。梅宮辰夫の歌は上手いとは言えないが、ミョーな台詞が入ることもあり、トホホ度は満点を献上しました。彼の歌で一番の傑作はこのブログでも紹介した「シンボル・ロック」(2017.3.7)であるが、本作も高く評価したい。

トホホ度 ★★★★★
お笑い度 ★★★☆
意味不明度 ★★★