クリムト 官能の世界へ/平松洋著

今年は1862年生まれのクリムトの没後100年だそうです。この本は世紀末のウィーンで活躍したクリムトの170点の絵とその生涯を解説しています。

クリムトに題材を採った映画には「クリムト(2006)」と「黄金のアデーレ  名画の帰還(2015)」があります。「クリムト」は臨終寸前のクリムトが過去を思い出す形で彼の生涯が語られます。クリムトの弟子のエゴン・シーレ役が病的な表情を旨く出していました。(エゴン・シーレには『エゴン・シーレ 死と乙女』(2017)という映画があります。)

この映画には焼失した壁画や正方形の風景画が出てきて、ほぼ史実に沿って進行します。が全体的にどうも妖しい雰囲気で余り後味は良くありませんでした。正方形のキャンバスには印象派のような点描で風景が描かれておりクリムトにも印象派の影響があったようです。キャンバスを正方形にしたのは何かの拘りがあったんでしょうか。

クリムトは映画「クリムト」にもあるように、アトリエに裸の美女を何人も待機させ、気の赴くままにスイッチして独特の裸女画を多数描いていたようです。そのモデル全員と寝たという噂もありますが、真偽のほどは定かではありません。

「黄金のアデーレ 名画の帰還」は大戦でドイツに接収されたクリムトの絵を取り戻すという実話に基づいた映画で、明るいハリウッド映画です。実際に取り戻された「アデーレ・ブロッホ=バウァーの肖像Ⅰ」は私がロサンジェルスに居る時に公開され運良く見ることが出来ました。当時のヨーロッパ画壇にはジャポニズムと呼ばれる日本画ブームがあり、クリムトもその影響を受けていますが、金箔を上手く作品に取り入れたのは彼だけでしょう。和洋に限らず金箔の輝く絵というものは見るものを圧倒します。

本書は新書サイズにクリムトの代表作が殆ど網羅されています。普通の画集や写真集は最低でもA4サイズで、判型が大きい方が絵も写真も迫力がでますが、ちょいと持ち歩くには大きすぎます。それに比べ本書は扱いやすい画集という感じでクリムトに興味のある方にはお勧めします。